1型糖尿病とは
 

 1型糖尿病(IDDM、インスリン依存型糖尿病、小児期に起こることが多いため小児糖尿病とも呼ばれます)は、主に自己免疫(図1)によっておこる病気です。自分の体のリンパ球があやまって内乱を起こし、自分自身のインスリン工場、膵臓のランゲルハンス島B細胞(図2)、の大部分を破壊してしまうことで発病します。
  生活習慣病でも、先天性の病気でもありませんし、遺伝して同じ家系の中で何人も発病することもまれです。過去のウイルス感染がリ ンパ球の内乱のきっかけになっている場合が多いのですが、糖尿病の発病はウイルス感染がなおった後の出来事ですから、糖尿病が感染することはありえませ ん。
 1型糖尿病では、自分の体の中の工場でインスリンを作ることができなくなってしまいます。インスリン(図3)がないと、グルコース(ブドウ糖)を細胞に取り込むことができず、血管のなかにグルコースがあふれかえることになってしまいます。
  グルコースは細胞のエネルギー源(図4)として大切なものですが、血管の中に大量に残っていると、様々な形で血管の壁に溜まり、糖尿病特有の合併症につながります。
 1型糖尿病では、脳死膵臓移植や膵島移植を受けるか、血糖測定(図5)をしながら、生涯にわたって毎日数回のインスリン自己注射(図6)またはポンプによる注射を続ける以外に治療法はなく、糖尿病患者の99%を占める2型(成人型)糖尿病とは原因も治療の考え方も異なります。
 日本での年間発症率(図7)は、10万人あたり1〜2名ですが、北欧、イタリアの一地方など、発症率の高いところもあります。

 このように、主に子どもに起こる原因不明の難病であることに加え、治療を厳密に行わないと心臓、腎臓、眼、神経等の病気が発症しますので、患者本人の苦痛はもとより、患者家族にとっての精神的、経済的負担は多大なものとなっています。